研究概要 |
本研究課題では線虫の新規低分子RNAの転写, プロセッシング, 局在について検討することを目的とする. 平成20年度は, CeR-2 RNA (rRNA前駆体のプロセッシングに関与する)の遺伝子cer-2の上流に位置する共通配列(proximal sequence element [PSE]と類似した配列)に加えて, 同様の上流配列をもつ他の線虫新規ncRNA遺伝子の発現と上流配列の関係について解析することを目標とした. これらのncRNAは組織特異的な発現を示したり, CeR-2 RNAとは異なる細胞内局在を示したりする. 解析手段として, RNA遺伝子の上流配列を用いてゲルシフトアッセイを行い, それぞれの領域に結合する因子があるか否か判定すること, それぞれの上流配列にGFP遺伝子をレポーターとしてつなげ, 組織特異的な発現や局在の解析に用いることを計画した. この結果, 前者の実験から, 組織特異的な発現を示す2種類のncRNA遺伝子について, 上流約1kbの範囲にトランスに働く因子があることが示唆された. dI-dCを用いた競合実験ではシフトしたバンドに影響がなかったのに対し, それぞれの上流配列を競合剤としてゲルシフトの反応液に加えた場合は, シフトしたバンドの位置に変化が見られた。このことは, トランスに働く因子が配列特異的にそれぞれのRNA遺伝子上流配列に結合している可能性を示唆する. 細胞抽出液をDEAEカラムで分画した後, それぞれの画分を用いてゲルシフトアッセイを行ったところ, 特定の画分に結合因子が含まれていることがわかった. GFP遺伝子を用いたレポーターアッセイでは線虫に導入するためのプラスミドの構築を行ったものの, 線虫での発現が確認されず, 今後継続して検討しなければならない課題となった.
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