研究概要 |
本研究では、塩基除去修復(BER)に働くDNAポリメラーゼβ(POLβ)、2本鎖切断の相同組換え(HR)修復に働くRAD54、非相同末端連結(NHEJ)修復に働くDNAリガーゼIV(LIG4)の各遺伝子破壊株、PoLβと,RAD54およびPOLβとLIG4の2重破壊株をヒトNalm-6細胞から作製する。これら破壊株を用いて、自然ないしアルキル化剤や過酸化水素等の処理による塩基損傷や1本鎖切断のBERによる修復、また損傷部位が複製フォークに衝突し生じる2本鎖切断のHRおよびNHEJによる修復を解析し、異なる修復経路間の相互作用と連携を明らかにすることを目的とする。 すでに野生株Nalm-6からPOLβ、RAD54およびLIG4遺伝子の各破壊株の作製している。これらの株の増殖能を調べると、全ての破壊株で野生株と有意の差が見られなかった。また、アルキル化剤MMSに対してPOLβ破壊株のみ高感受性を示したが、過酸化水素に対して全破壊株で有意の差が見られなかった。他方、LIG4破壊株に2種類のPOLβターゲティングベクターを順次導入し、2重破壊株(POLβ^<-/->LIG4^<-/->)の作製に成功した。この2重破壊株の増殖能は野生株および単独破壊株より有意に低下し、MMSに対しPOLβ破壊株よりさらに高い感受性を示した。一方、POLβ破壊株にRAD54ターゲティングベクターを導入してヘテロ破壊株をすでに作製を終え、現在、ホモ2重破壊株の作製を行っている。この2重破壊株を取得できれば、上述の形質に加え、染色体異常、SCE、などを解析する。また、1本鎖切断を生じるDNAトポイソメラーゼ(TOP)I阻害剤カンプトテシン、2重鎖切断を生じるTOPII阻害剤VP-16やX線などに対する感受性を調べる。さらに、DNA傷害剤で生じる鎖切断レベルと、その修復能を生化学的に比較・解析する予定である。
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