NAP-1、ACF、TopoIからなるクロマチン再構成系と大腸菌で発現させて精製したヒストン(H2A、H2B、H3、H4)を用いて、組換え体タンパク質のみでクロマチンを作製した。この系では、約180bpおきに規則的にヌクレオソームが出来ていることが、ミクロコッカス・ヌクレアーゼアッセイとスーパーコイルアッセイにて確認できた。 この系では、AuroraキナーゼによってヒストンH3のS10とS28が効率良くリン酸化されたが、別のヒストンH3のリン酸化酵素であるMSK1はヒストンH3をリン酸化しなかった。このクロマチンにCREB、ATF1、SRF、Elk-1をさらに加える、MSK1によるヒストンH3のリン酸化が観察された。しかし、AuroraキナーゼによるヒストンH3リン酸化はCREB、ATF1、SRF、Elk-1には全く影響を受けなかった。GSTプルダウン法では、Auroraキナーゼは全てのヒストンと相互作用したが、MSK1は相互作用しなかった。その一方で、MSK1はCREB、ATF1、Elk-1と相互作用した。これらの結果より、MSR1は転写因子依存性に、クロマチン上のヒストンH3をリン酸化することが明らかとなった。 MSK1による転写因子依存性のヒストンH3リン酸化は、CREB、ATF1、SRF、Elk-1のなかでも特にCERBに依存していた。また、CERBのセリン133がリン酸した時だけ、このリン酸化反応がみられた。MSK1によるリン酸化ヒストンH3の位置を、ChIPアッセイで検討すると、c-fos遺伝子のプロモーター近傍でもっとも強く観察された。Auioraキナーゼによるリン酸化は遺伝子の位置によらず、全てのヒストンH3で均一に見られた。
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