I.ベントDNAが担う遺伝情報の解析 T20は、負の超らせんを擬態した180塩基対の合成ベントDNAで、我々はこれまでに、HeLa細胞のゲノム内でT20がクロマチンを制御して転写を活性化できることを明らかにしていた。さらにT20はマウスES細胞内でも、また同細胞を肝細胞に分化させた後にも、下流につないだプロモーターを活性化できることを解明していた。今年度は、T20をもつレポーターがどこに局在するかを明らかにする目的で、lacO/lacl-GFP法でES細胞内での局在を解析することにした。64コピーのlacO配列をタンデムに並べたDNAを上記のレポーターにつなぎES細胞ゲノムに1コピー導入した。この細胞株を用いて、上記の方法で核内局在を解析したところ、T20をもつレポーターが核の周縁部に局在していることが分かった。 II.DNAの物理的特性が担う遺伝憎報の解析 昨年度、出芽酵母第3染色体の全ての高頻度組換え部位を対象としてDNAの柔軟性を解析した。その結果、高頻度組換え部位は特徴ある特性をもっていることが示唆されたが、ゲノム全体をDNAの柔軟性という視点で俯瞰してもその特性が際だったものかどうかは不明であった。そこで本年度は、出芽酵母のゲノム全体の柔軟性地図を作製して、先の疑問に答えることにした。地図は計画通り作製できた。ゲノム全体を眺めた場合、残念ながら、高頻度組換え部位が他の領域と区別できるような際だった特徴があるわけではないことが明らかになった。ところが予期しない大きな発見があった。解析の結果、エキソン領域がイントロンや遺伝子間領域よりも明らかに柔らかいDNAでできていることが分かった。現在、その意味を明らかにすべくさらに解析を続けている。
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