研究概要 |
ATRX症候群原因遺伝子においてN末の3つのZnフィンガー領域(ZnF1,ZnF2,ZnF3)に遺伝病の変異が多発するが、この領域の機能は不明である。本研究は、遺伝病において変異が多発する領域がユビキチンリガーゼ活性を有し、これがクロマチン関連因子のユピキチン化を通じて遺伝子発現を制御するという仮説を検証することを目的とし研究を行った結果、平成18年度は以下の様な結果を得た。 1.ATRXのZnフィンガー領域とGAL4 DNA結合ドメインの融合蛋白質はZnフィンガーに依存してin vivoでユビキチン化されることがわかった。 2.ATRXのZnフィンガー領域とmaltose binding proteinやGSTとの融合蛋白質はin vitroでUbcH5a,5b,5cに依存して自己ユビキチン化されることより、ユビキチンリガーゼの活性をもつことがわかった。更にこの活性には、今までにユビキチンリガーゼ活性を持つことが知られているRING/PHDフィンガー様のドメイン、ZnF2-ZnF3だけではなく、そのN末のZnF1も必要であった。また、ATRX症候群を引き起こすZnフィンガーの変異により、ユビキチンリガーゼ活性が減少した。以上のことより、(1)ATRXのZnフィンガードメインは新しいタイプのユビキチンリガーゼドメインであること、(2)遺伝病の原因の一つはユビキチンリガーゼ活性の低下によることが示唆された。 3.ATRXのZnファインガーに相同性な配列を持つヒトの遺伝子ATRXLα,ATRXLβ,ATRXLγ,を見出した。これらのZnファインガードメインに関してもin vitroでユビキチンリガーゼ活性を持つことが示された。 4.相同性検索の結果、DrosophilaのATRXは、リガーゼ活性を持つdATRXNとヘリケース活性を持つdATRXCの2個の蛋白質に分かれていることが示唆された。
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