研究概要 |
ATRX症候群原因遺伝子においては機能が不明なN末の3つのZnフィンガー領域(ZnF1,ZnF2,ZnF3)に遺伝病の変異が多発する。本研究はこの領域がユビキチンリガーゼ活性を有し、これがクロマチン関連因子のユビキチン化を通じて遺伝子発現を制御するという仮説を検証することを目的として研究を行った。 1.(1)ATRXのZnフィンガー領域はin vivo, in vitroでユビキチン化され、(2)この活性には、今までにユビキチンリガーゼ活性を持つことが知られているRING/PHDフィンガー様のドメイン、ZnF2-ZnF3だけでなく、そのN末のZnF1も必要であった。また、(3)ATRX症候群を引き起こすZnフィンガーの変異により、ユビキチンリガーゼ活性が減少した。以上のことより、(1)ATRXのZnフィンガードメインは新しいタイプのユビキチンリガーゼドメインであり、(2)遺伝病の原因の一つはユビキチンリガーゼ活性の低下によることが示唆された。 2.Far-UV CDスペクトルを測定した結果、ZnF1のみの変異によりZnフィンガー全体の構造が大きく変化し、酵素活性が消失したと考えられた。 3.ATRXのZnファインガーに相同性な配列を持つヒト遺伝子ATRXLα,ATRXLβ,ATRXLγを見出し、これらのZnファインガードメインもin vitroでユビキチンリガーゼ活性を持つことが示された。 4.相同性検索の結果、DrosophilaのATRXは、リガーゼ活性を持つdATRXNとヘリケース活性を持つdATRXCの2個の蛋白質に分かれていると考えられたが、dATRXNのZnフィンガー領域にはユビキチンリガーゼ活性が検出されなかった。 5.ATRXに相互作用するヘテロクロマチン蛋白質HP1とヒストン脱アセチル化酵素HDAC1はATRXによりユビキチン化されなかった。
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