細胞周期のM期への進行は、Cdc25によるcyclinB・Cdc2複合体キナーゼ活性化により誘起される。しかし、その上流については、実験材料などにより制御機構が異なる。本研究では、一つの種においても、減数分裂の第一分裂と第二分裂、さらに発生の始まった初期卵割周期において、M期開始の制御機構が転換していくことを実証しようとしている。本年度は、これまでに明らかにしていたCdc25の上流因子の解析結果に加えて、そのカウンター因子であるMyt1について解析し、下記のような知見を得た。 1.減数第二分裂時のM期開始制御機構 減数第一分裂では、Cdc25とMyt1はAktにより制御される。第二分裂開始時では、Cdc25の制御因子がAktに変わってp90Rskに転換するのに対し、Myt1の場合は、第二分裂時には細胞内においてSer75がリン酸化の制御を受けないことを、本年度新たに調製したリン酸化抗体、ならびに本年度研究費により購入した顕微装置を用いて明らかにした。また、in vitroでのリン酸化実験でも、RskはMyt1をほとんどリン酸化しないことを見出した。Ser75以外のMyt1のリン酸化は、Plk1の活性と対応関係が見られた。 2.初期卵割過程におけるM期開始機構 Myt1のSer75のリン酸化制御は、初期卵割過程のM期には再びみられる。しかし、その時にAktは活性化していないことを、活性型Aktを特異的に認識する抗体を作成して示した。Aktがリン酸化する可能性が排除されたため、Myt1のSer75のリン酸化は他の因子により制御されていることが示唆された。 以上、本年度は、卵減数第一分裂時にはAktがM期開始の引き金であるのに対し、減数分裂第二分裂および初期卵割過程では、p90RskでもAktでもない、未知のキナーゼがM期開始時にMyt1のSer75をリン酸化制御することが示された。
|