前年度までに、ボツリヌスHAに上皮細胞間バリアを破壊する新規活性があること、およびこの活性により大量の神経毒素が腸管上皮細胞間隙から流入することが明らかになった。またHAの作用機序を解明するために必要なrecombiant HAなどの材料の作製が修了した。そこで本年度は、それらの材料をもとにして本活性の発現メカニズムをさらに詳細に解析した。 1)HAの上皮細胞間バリア破壊機構の解析 16S毒素よりNAP-16成分(HAとNTNHの複合体)を単離し、以下の実験に用いた。NAP-16のTER低下活性をapicalから添加した場合と、basolateralから添加した場合で比較したところ、basolateralから添加した場合、apicalから添加した場合よりも少ない用量で作用を示し、作用を発現するまでの時間も短いことが観察された。このことからHAの作用点はbasolateral側細胞膜上にあることが推察された。抗HA抗体をbasolataral側に添加する実験系により、HAの作用点がbasolateral側細胞膜上にあることが明らかになった。したがって、16S毒素はまずapicalからtranscytosisによりbasolateral側へ移行し、basolateral側から細胞間接着を破壊し、その後細胞間隙から大量の神経毒素が流入する3stepメカニズムにより、巧妙に腸管上皮バリアを通過していることが示唆された。 2)ボツリヌスHA中の機能ドメインの同定 native HAとほぼ同様の活性を有するHA1+2+3複合体を作製し、pull dowm法にて、細胞溶解液から、HAに結合するligandを探索した。その結果、いくつかの候補タンパク質が得られた。
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