(1)「PAR-1bがいかにUtrophin/DGの膜局在を制御するのか」という点に関しては、昨年度発見した「PAR-1bがDGの細胞質領域をリン酸化する」という機構、および、本年度新たに発見した「PAR-1bがUtrと直接結合しそれをリン酸化する」という機構各々について関与している可能性を精力的に検討した。しかし、外来性に導入したDGが正常に糖鎖修飾を受けないといった技術的困難を未だ克服するにいたらず、最終的な結論を得るに至っていない。(2)「apical極性を制御する他のシグナル系との関連」という点では、PAR-1b→Utr/DG系がRac1系とは独立していることを明確に示す結果を得ることができた。(3)「PAR-1bの新たな結合タンパク質の検索」という点では、アンカリングタンパク質の同定には至らなかったが、新たにPAR-1bが細胞内小胞輸送を制御する際に標的としていることが予想されるタンパク質の同定に成功した。PAR-1bはこのタンパク質を強くリン酸化することも明らかとなり、今後の研究の新しい展開を切り開く成果として高く評価できる。(4)「基質からのシグナルがいかに上皮極性を制御するのか」という点について網羅的に解析する計画については、上記(1)〜(3)の研究の展開との関連で着手するには至らなかった。
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