研究課題
基盤研究(C)
本研究では、細胞増殖に必須な役割を果たす転写調節因子hDREFの細胞周期における作用点とその役割を明らかにすることを目的に、hDREFの標的遺伝子の同定とhDREFをノックダウンしたときに起こる細胞の表現型の詳細な観察を行い、以下のような成果を得た。(1)hDREF標的遺伝子の同定についてhDREFをノックダウンした細胞で発現に変化のある遺伝子をDNAアレイ解析によって検索し、約200個のhDREFの標的遺伝子候補を得た。これらの遺伝子の中でリボソームたんぱく質をコードする22個の遺伝子がhDREFの主たる標的遺伝子でありかつ、細胞周期を進行させるのに本質的に必要であるかどうかを検証することができた。このことは、hDREFはトータルな細胞内タンパク質合成量を決定する上で重要な役割を担っていることを意味している。今後は、他の候補遺伝子の中で直接hDREFによる発言調節を受ける遺伝子をChIP on chip法などで絞りこむ予定である。(2)hDREFの細胞周期進行における役割について初年度の研究により、hDREFをノックダウンするとG2-M期の細胞が蓄積することを明らかにした。これを受けて、G2-M期に起こる時系列的なイベントのうちどのステップがhDREFのノックダウンにより影響を受けるかをウエスタンブロッティングと細胞の免疫蛍光染色により調べた。その結果、hDREFの枯渇は、M期の極初期で染色体の凝縮が始まる以前に細胞周期の停止をもたらすことが判明した。さらに、核膜周辺と核小体周辺でヘテロクロマチン化が亢進されていることを見つけた。このことは、hDREFがクロマチンの高次な構造変換の制御に関与している可能性を示唆している。今後はその分子メカニズムとG2/M期との関係性を明らかにする必要がある
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