動物細胞には細胞内型ホスホリパーゼA_1ファミリーに属する三種のタンパク質、PA-PLA_1、p125、KIAA0725pが存在する。これまでの解析により、p125は小胞体から出芽する輸送小胞COPIIのコートタンパク質と結合し、小胞体のマイクロドメインER exit siteの構築に関与することが示唆されている。KIAA0725pはゴルジ体に、PA-PLA_1は細胞質に局在する。本研究の目的は三種のファミリータンパク質の機能の解明にあり、19年度は以下の結果を得た。 1 生化学及び細胞生物学的解析 精製タンパク質を用いて脂質結合能を解析した結果、p125とKIAA0725pはホスファチジルイノシトールリン酸(PI3P、PI4P、PI5P)との結合し、PA-PLA_1はどの脂質とも結合しなかった。ER exit siteとゴルジ体にはPI4Pが存在することが報告されている。p125とKIAA0725pはPI4Pを介して膜に結合し、さらにp125はコートタンパク質との結合ドメインを持つことによりER exit siteに局在する可能性が考えられた。輸送基質としてVSVGとShiga toxinを用い、KIAA0725pの順行および逆行輸送への関与を解析した。KIAA0725pはゴルジ体-細胞膜間の順行および逆行の両輸送過程に関与している可能性が示された。 2 ノックアウトマウスの作製 Cre/loxPシステムを用いたコンディショナルノックアウトマウスの作製を目指し実験を行った。PA-PLA_1に関してはホモの遺伝子改変マウスの作製が完了した。今後、CREリコンビナーゼマウスとの交配によりPA-PLA_1遺伝子を欠損したマウスを作製予定である。p125はヘテロの遺伝子改変マウスの作製まで、KIAA0725pはジャームライントランスミッターであるアグーチマウスの作製まで完了した。
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