研究課題
基盤研究(C)
脊椎動物後脳には三叉、顔面、舌咽、迷走、という鰓弓神経が生じる。これには分節的な神経堤細胞の流れが関与するが、その移動経路選択の機構は完全には明らかになっていない。そこで我々は、脊椎動物後脳部で特異的に発現する遺伝子群を検索し、機能解析を行ってきた。本研究では、cornichon-like protein(cnil)という遺伝子が、後脳分節3、5で特異的に発現している事を明らかにした。更にcnilタンパクは、heparin-binding growth factorの分泌を促進することにより、HB-EGF→ErbB4というシグナル伝達の場所を限局していることを明らかにした。Cnilはpro-HB-EGFと細胞内で結合し、培養細胞系を用いた実験ではHB-EGFの培養上清中への分泌を促進した。またカルボキシ末端側を欠損したcnilの変異体(Δ-C)は優性不能型変異体として働き、野生型のHB-EGF分泌促進効果も抑制する事も明らかにした。ニワトリ胚後脳に電気穿孔法でΔ-C-CNILを導入すると、後脳部由来神経堤細胞の移動経路が異常になり、三叉神経節-顔面神経節間に異常な神経軸索連絡が生じる。この異常は分泌型HB-EGFの強制発現により抑制されるので、ニワトリ胚後脳部ではHB-EGFが神経堤細胞移動経路選択に重要なシグナルであることが証明された。これまでは後脳部でのErbB4リガンドはNeuregulinだけが考慮されていたので、今回の研究はHB-EGFも重要である事を示したものであり、意義深い。これらの結果はアメリカ細胞生物学会誌にて報告した。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
Molecular Biology of the Cell 18
ページ: 1143-1152
Molecular Biology of the Cell Vol.18