〔1研究目的〕 様々な形態形成の制御因子として働く骨形成タンパク質(BMP)に対する細胞の応答能(コンピテンス)は、発生過程の時期および領域に応じてダイナミックに変化していると予想され、形態形成を分子レベルで知るうえで応答能の制御機構を理解することは不可欠である。しかしながら、BMPシグナル伝達機構の詳細が近年明らかにされつつある一方で、応答能の確立および調節機構に着目した研究は数少ない。本研究では、研究代表者がBMPに対する応答能の制御因子として単離したXOct-25転写因子について、その下流因子の探索と機能解析をおこない、応答能の確立および調節機構を分子レベルで明らかにする。今年度は、マイクロアレイ法を用いてXOct-25転写因子の下流因子の探索をおこない、過剰発現実験によって下流因子の機能を解析することを目的とした。 〔2研究成果〕 XOct-25は転写活性化因子として機能しており、下流因子を誘導することによって間接的にBMPシグナルの標的遺伝子の発現を抑制していると考えられた。そこで、誘導型XOct-25(GR-Oct)によって転写レベルで発現が誘導される遺伝子をマイクロアレイ法によって単離することを試みた。GR-Octを発現させた予定外胚葉を、DEXを含む培養液と含まない培養液の2つの条件に分けて培養し、それぞれの予定外胚葉から抽出したRNAを用いてマイクロアレイ解析をおこなった。実験を2回行い、XOct-25が活性化した条件(DEXあり)で再現良く、かっ有意に発現が上昇した遺伝子(下流因子)を1つ選び出した。この下流因子に特異的なプライマーを用いてRT-PCR法をおこない、XOct-25が下流因子の発現を強く誘導することを確認した。また、ツメガエル初期胚に対するin situハイブリダイゼーション法を行い、下流因子の発現領域を解析した。その結果、下流因子の発現は初期原腸胚期以降に強くなり、神経板に限局することが明らかになった。さらに、下流因子のmRNAをツメガエル卵に注入して過剰発現させたところ、表皮の形成が抑制され、下流因子がXOct-25と同様に、BMPシグナルを抑制している可能性が高いことが分かった。
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