研究課題
基盤研究(C)
〔1研究目的〕様々な形態形成の制御因子として働く骨形成タンパク質(BMP)に対する細胞の応答能(コンピテンス)は、発生過程の時期および領域に応じてダイナミックに変化していると予想され、形態形成を分子レベルで知るうえで応答能の制御機構を理解することは不可欠である。しかしながら、BMPシグナル伝達機構の詳細が近年明らかにされつつある一方で、応答能の確立および調節機構に着目した研究は数少ない。本研究では、研究代表者がBMPに対する応答能の制御因子として単離したXOct-25転写因子の下流因子の探索と機能解析をおこない、応答能の確立および調節機構を分子レベルで明らかにすることを目的とした。〔2研究成果〕XOct-25はBMPシグナルを抑制して神経形成の促進に働くことから、Oct下流因子の機能阻害が神経形成に与える影響を解析した。Oct下流因子mRNAの翻訳を阻害するモルフォリーノオリゴをツメガエル胚に注入した結果、予想どおり神経系に形態的な異常が見られた。また、ホールマウントin situハイブリダイゼーション法によってマーカー遺伝子の発現領域を解析したところ頭部神経領域が拡大し、後方神経領域(脊髄)が縮小していることが分かった。この結果は、Oct下流因子が後方神経の形成に働くことを示唆しており、XOct-25とその下流因子が共に神経板の後方領域で発現するという過去の研究結果とも一致していた。さらに、Oct下流因子の過剰発現が、BMPアンタゴニストによって誘導された前方神経を後方化させること、また下流因子単独での過剰発現が表皮形成を抑制することも明らかになっており、Oct下流因子は、外胚葉の神経・表皮の細胞運命決定と神経の前後軸パターン形成に働くと考えられた。
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Mechanisms of Development 124
ページ: 840-855
http://home.hiroshima-u.ac.jp/~amphibia/Suzuki/suzukitop.html