脊椎動物をはじめとする多くの動物にとって、内、中、外胚葉の3層からなる構造は、体を形作るための基本構造といえる。この3胚葉構造を作る重要な形態形成運動が原腸形成運動である。両生類胚、魚類胚などの原腸形成運動においては、中胚葉組織が収斂伸長運動とよばれる運動により外胚葉と内胚葉の間に入り込み、伸長しながら移動する。近年、膜輸送系がシグナル分子の細胞内情報伝達や、細胞極性の制御にも密接に関わっていることが明らかになりつつある。このことから、膜輸送系が原腸形成運動をはじめとする初期発生の形態形成運動の制御に関わるかどうかを検討した。本研究で注目したのはRabファミリーGTPaseである。Rab GTPaseは、数十種類のメンバーが知られている。これらは、小胞体からゴルジ体、細胞膜への輸送やエンドサイトーシスなど膜輸送過程のあらゆる段階で特異的な役割を果たしていることが知られている。Rabファミリーメンバーが発生過程において果たす役割を解析することにより、膜輸送系制御の発生過程における重要性を明らかにできると期待される。カエル初期胚では30数種類のRabが発現している。我々は、これらの遺伝子の、胚における過剰発現、ドミナントネガティブ型変異遺伝子の発現、アンチセンスオリゴの導入などによって、原腸形成過程に必須のRab GTPaseを同定した。このRabは、ゴルジ体に局在していることがわかった。また、興味深いことにこのRabはほかのファミリーメンバーとは異なり、Cullinタンパク質と複合体を形成してユビキチンE3リガーゼ複合体を形成していることを明らかにした。さらにこの複合体がWntシグナル伝達を制御することにより原腸形成運動に必須の機能を果たしていることを明らかにした。
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