研究概要 |
日本人の起源に関する二重構造仮説では、縄文人は東南アジアと考えられている。しかし、最近の、特に遺伝学的研究では、縄文人と北東アジア集団の密接な関係がより多く示唆されている。本研究は、元々形態学的な視点から考えられた縄文人の東南アジア起源説を、同じ形態学の立場から再検討し、縄文人の起源を洗いなおすことを目的として開始された。 本年度は、特に近世アイヌの成立過程における外来遺伝子の影響に関する研究を、R-matrix法を用いることにより検討した。その結果、北海道アイヌ、特にオホーツク海沿岸域のアイヌは、北東アジア集団、特にオホーツク文化期人の影響を多かれ少なかれ受けたと考えられることが明らかとなった。このことは、遺伝学的に、アイヌに北方要素が認められることとよく一致する。しかし、オホーツク文化期人の北海道への渡来時期が5〜12世紀であることから、縄文時代のはるか後に北方遺伝子が持ち込まれたことになる。このことはアイヌ=縄文とみなし、アイヌが北東アジアと遺伝学的関係があるから、縄文も北方起源だとするこれまでの見解が、必ずしも正しくないことを示唆する。 本年度はさらに縄文人の地理的変異、さらにその変異の地理的勾配に関する予備的研究も実施した。その結果、大きく北から南に変化する変異の大きさの地理的勾配が認められた。このことは縄文人が北から拡散してきた可能性を示唆するが、さらに、local variation,regional varition, global variationという変異の差を詳細に検討しなければ、ただちに結論付けるとこは出来ないであろう。 来年度はさらに詳細に上記のことを検討する予定である。
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