研究課題/領域番号 |
18570221
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
分部 哲秋 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (50124847)
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研究分担者 |
佐伯 和信 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (80195966)
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キーワード | 南九州地域 / 地下式横穴墓 / 古墳時代人骨 / 形質人類学 / 頭蓋・四肢骨計測 / 頭蓋形態小変異 / mtDNA解析 |
研究概要 |
人骨形質から南九州地方の古墳時代人の系統関係を探求することは、埋葬遺構の特殊性もあって日本人の形成を考察する上で重要である。昨年度の長崎大学保管資料の調査に加え、本年度は宮崎県立西都原博物館所蔵のえびの市島内地下式横穴墓群総数65基から出土した古墳人骨を主体に、形質人類学的調査を実施した。実際には総数160体(成人:男性53体、女性56体、不明19体、未成人:32体)を対象に、頭蓋・歯・四肢骨の計測、頭蓋形態小変異の観察、ミトコンドリア(mt)DNA解析を行なった。 現在までの結果として、頭蓋計測では、男性の頭型は縄文系及び渡来系の弥生人に比べて短頭傾向を認める。男性顔面の幅径は両系統の弥生人に比べて大差無いが、上顔高が低く、上顔示数も渡来系弥生人よりもかなり小さくて低顔傾向が著しい。頭蓋形態小変異の出現頻度は、渡来系弥生人よりも頬骨後裂等が高頻度で出現し、眼窩上縁孔の出現頻度はきわめて低率である。すなわち、えびの市の地下式横穴墓群出土古墳人は、頭蓋計測及び頭蓋形態小変異の両形質ともに、縄文系の形質に近いことを示している。 mtDNA解析については、昨年度採取した灰塚地下式横穴墓群(6体)、大萩地下式横穴墓群(24体)、日守地下式横穴墓群(10体)、今年度前半期に採取した旭台地下式横穴墓群(29体)の人骨試料について、DNAの抽出、HV1領域とHV2領域の増幅およびシークエンス処理を行い、これまで29個体の塩基配列(HV1 16190-16410部位)を特定している。その成果は第61回日本人類学会で発表し、22のシークエンスタイプから構成されていること、ハプログループ頻度の構成に南九州の地域性が示唆されることを示した。現在、特定した29個体の再現性の確認作業と塩基配列未確定の個体試料の増幅、シークエンス処理の継続とともに、今年度後半期に採取した島内地下式横穴墓群人骨(102体)試料のDNA抽出作業を行っている。
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