研究課題
オオムギには種子と内外頴が密着する「皮性」と、両者が分離できる「裸性」がある。皮裸性は穀粒の用途に関係する重要形質で、裸陸は単一劣性遺伝子(nud)に支配される。他のイネ科作物は全て裸性であることから、皮裸性の分化はオオムギ固有の形質として注目される。今年度はnud遺伝子座を包含するBACコンティグ配列の詳細なアノテーション解析を行い、様々な状況証拠とあわせて、Nud遺伝子を特定することに成功した。さらに頴果の脂質染色や遺伝子の時間的ならびに空間的な発現解析を行い、皮裸性が発現するメカニズムを明らかにした。主要な研究成果を以下に列記する。オオムギ皮性品種はるな二条のBACライブラリーを用いnud遺伝子座をカバーする総長約500kbのBACコンティグを構築した。そのうち、nud座をカバーする4本のBACクローンからなる総長約244kbの塩基配列を完全に解読し、アノテーションを行った。その結果、遺伝マッピングで絞り込んだ領域にはコード遺伝子としてはERF転写因子が存在するだけで、この遺伝子がNudの正体であることが確実になった。この結論は、x線照射によって誘発された2系統の裸性突然変異体においてERF転写因子の機能的に重要なモチーフ内にアミノ酸置換がみられたことからも支持された。世界各地の裸麦100系統を調査したところ、いずれの系統もERF遺伝子を含む約17kbの領域を完全に欠失していた。このことから、裸麦は単一起源であることが明らかになった。さらに、コムギ・エギロプス属、ライムギ属およびオオムギ属の代表的な二倍体種から、ERF転写因子のホモログとPCR法により取得し、遺伝子の発現解析を行った。
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Proceedings of the National Academy of Sciences, U.S.A. 105
ページ: 4062-4067