研究概要 |
同質遺伝子系統を利用することによって,第6染色体に座乗するUr1遺伝子の座乗領域を,分子マーカーの1種であるSSRによって絞り込んだ.台中65号,‘しおかり'およびIR36の3品種とそれらのUr1同質遺伝子系統との間でSSRマーカーの多型を比較した.その結果,‘しおかり'同質遺伝子系統(戻し交雑11回)における未置換領域(遺伝子供与親とマーカー遺伝子型が同じ領域)は,台中65号のUr1同質遺伝子系統によって得られているUr1の未置換領域(推定座乗領域)より狭かった.すなわち,台中65号のUr1同質遺伝子系統(戻し交雑8回)では未置換領域は2.02Mbであり,‘しおかり'のUr1同質遺伝子系統では1.82Mbであった.しかし,IR36のUr1同質遺伝子系統(戻し交雑15回)とIR36の間では多型が検出されなかったので,未置換領域は50kb以下しか残存しておらず、戻し交雑によるIR36による置換が顕著に進んでいた。したがって,その未置換領域の検出のためには,塩基レベルならびに微細なINDELによる解析が必要と考えられる. 高精度マッピングにおいては,台中65号または‘しおかり'の同質遺伝子系統と遺伝子供与親であるN55またはH85とのマーカー解析において多型が得られたSSRマーカーを用いた.これらのマーカーを用いて,台中65号×Ur1台中65号同質遺伝子系統のF_3世代4000個体から得られた劣性(ur1/ur1型)の311個体に対して連鎖分析を行った.その結果,SSRマーカーが挟む28kbの領域にUr1遺伝子座が位置することを明らかにした.この領域には5つの推定される遺伝子が存在している.これらの領域においてCAPS解析を行ったが,さらに詳細なUr1の遺伝子領域への絞込みはできなかった.そのため,現在,塩基配列の分析を進めている.Ur1の遺伝子領域の特定はできていないものの,候補領域において絞り込みを行った.RT-PCRでは,28kbの候補領域内において推定される遺伝子にプライマーを設定した.これまでのところ,MYB遺伝子が穂で転写されていることが確認された.今後,Ur1ホモ型と野生型(ur1/ur1型)との間で転写の詳細な比較を行う予定である.
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