研究概要 |
リンドウの花色変異体及び懸濁培養細胞を用いて新規トランスポゾンの同定、解析試験を行い以下の結果を得た。 1.ピンク花リンドウのフラボノイド3',5'水酸化酵素(F3'5'H)遺伝子の第1イントロン内に322bpのDNA型トランスポゾン配列の特徴を有する挿入断片を同定した。本配列はタンパク質をコードしていない非自立型因子であった。本ピンク花リンドウ花弁におけるF3'5'H遺伝子の発現量が減少しており、本配列の挿入により変異が引き起こされたものと推察された。また、RT-PCR法によるF3'5'H遺伝子の転写産物の解析結果から、トランスポゾン配列の部分を含む異常なスプライシング産物の蓄積が確認され、本断片の挿入が直接ピンク花化に関わっていることが確認された。 2.リンドウから花弁着色に関わると推定されるMyb遺伝子を複数同定した。その中の1種類のMyb遺伝子のゲノム構造を解析した結果、白花では第2エキソンに271bpのDNA型トランスポゾン挿入断片が認められた。本配列もタンパク質をコードしておらず、非自立型因子であると推定された。また、他の白花リンドウ品種においても、本Myb遺伝子に異なるトランスポゾン様配列の挿入が確認された。 3.リンドウ懸濁培養細胞から新規トランスポゾンの単離を試み、hAT、En/Spm型トランスポゾンについて2種類ずつの遺伝子断片を単離した。また、RNA型については、1種類のLTR型レトロトランスポゾンを同定した。5-azadC、サリチル酸、ジャスモン酸による誘導性を解析した結果、一部で誘導が認められた。今後、同定した誘導条件を用いて、トランスポゾンディスプレイ法等により、転移活性を解析する予定である。今回の解析結果から、リンドウにおいて新規の転移因子が複数単離された。今後、解析を進めることにより、植物におけるトランスポゾンの進化、転移機構が明らかにする。
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