本研究では、耐冷性に関係することが報告されている遺伝子の相同性遺伝子をタイスでクローニング・マッピングし、QTL解析で明らがになっている耐冷性に関連するゲノム領域と比較することによって、耐冷性候補遺伝子を同定することを目的とする。本年度は、まず、トヨムスメ×ハロソイのF2集団でのSSRマーカーによる連鎖地図作成を完成させた。159マーカーによるジェノタイピングにより、総遺伝距離は、2780cMとなり、8割以上のゲノム領域をカバーできたものと考えられた。昨年マッピングできなかったSCOFI遺伝子は、このマップにより連鎖群Dlbにマッピングされた。また、トヨムスメ×トヨハルカのRIL集団について耐冷性に関するQTL解析を行ったところ、連鎖群A2のSat 162近傍にLOD値が10を超える大きなQTLが検出された。この領域がトヨハル力型になると低温下での種子数や粒大の減少を抑える効果がみられ、このQTLは低温下での種子発育に関与するものと推定された。広く環境ストレス耐性に効果があるとされるDREB遺伝子、耐冷性との関連が指摘されている抗酸化酵素遺伝子やポリアミン代謝関連遺伝子などのクローニングとマッピングを行った。DREB遺伝子、グルタチオンレダクタニゼ遺伝子、スペルミン合成酵素遺伝子などで塩基多型が得られ、DREB遺伝子は、連鎖群FとH、グルタチオンレダクターゼ遺伝子はJとDlb、グルタチオンSトランスフェラーゼはまE、スペルミン合成酵素遺伝子はGにマッピングされた。ハヤヒカリで低温時に時に特異的に増加するタンパクは、40Sリボソーマルタンパクと判明したが、塩基配列に関して品種間での多型は見いだされなかった。
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