研究概要 |
本年度は、モミラクトンBが生態系の中でイネのアレロパシー活性にどの程度関与しているのかを検討した。そのため、モミラクトンBの定量方法を確立し、水田環境で生育しているイネ植物のモミラクトンB生体内生量と、イネ植物から水田へのモミラクトンB放出量を明らかにした。さらに、イネ品種間での生産量や放出量の差異を明らかにした。 1、最初に、モミラクトンBの簡便なHPLCによる定量方法を確立した。この定量方法は、モミラクトンBの回収率は,90%以上であることから,今後のモミラクトンBの定量に利用できると考えられる。 2、モミラクトンBの、イネ植物から環境への放出量、イネ生体内での内生量及び分布、イネの生長発達過程のどの時期に最も多く合成され最も多く環境に放出されるかを水田環境で明らかにした。モミラクトンBの内生量は,イネの生育に伴い増加し,開花期で最も多かった。また,イネ地上部のモミラクトンB含量は地下部の数倍であった。モミラクトンBの生合成部位はイネの地上部であると考えられた。また,イネ植物から環境への放出量も,イネの生育に伴い開花期まで増加した。80日齢のコシヒカリは1g新鮮重あたり,地上部で85μg,地下部17μgのモミラクトンBを含んでいた。また,このときコシヒカリ1個体は,1日あたり,2.3μgのモミラクトンBを環境に放出していた。これらの研究結果は、モミラクトンBの化学生態学的意義を考察するために特に重要である。 3、さらに、イネ品種間での、モミラクトンBの内生量や放出量の差異を明らかにした。日本在来8品種のイネのなかでコシヒカリの雑草抵抗性が最も強く,モミラクトンBの環境への放出量も最も多いことが分かった。また,8品種のモミラクトンBの放出量とこれら品種の雑草抵抗性の間には正の強い相関関係があり,モミラクトンBの放出量の差異でイネの雑草抵抗性の差異が説明できることを示唆している。
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