研究概要 |
モミラクトンは,イネのアレロパシー物質であり,イネはモミラクンを生産し根圏に放出することで,周りの雑草の生育を抑制し生き残りを図っていると考えられる.そこで,水田の主要な雑草であるイヌビエにモミラクトンAとBを与えたときの生長抑制活性と,与えたモミラクトンAとBがどの程度イヌビエに取り込まれたかを明らかにした.また,モデル植物のシロイヌナズナにモミラクトンAとBを与え,タンパク質の発現に与える影響を検討した.モミラクトンAはイヌビエの生長を1μM以上の濃度で,モミラクトンBは0.3μM以上の濃度で抑止した.イヌビエの生長を50%抑制するモミラクトンAとBの濃度は,それぞれ12μMと1.6μMであり,モミラクトンBの生長抑制活性が大きかった.また,モミラクトンAとBは,ほとんどイネ自身の生長を抑制しなかった.10μMのモミラクトンAとBをイヌビエに与えたとき,イヌビエのモミラクトンA取り込み量は12.3pmol/seedlingで,モミラクトンBの取り込み量は19.7pmol/seedlingであり,モミラクトンBの取り込みが大きかった.シロイヌナズナにモミラクトンAとBを投与し2日間培養後,シロイヌナズナのタンパク質を抽出し,SDS-PAGEにかけた.その結果,60-,50-kDaのバンドはモミラクトンBで抑制されること,31-,27-,20-,18-kDaのバンドはモミラクトンAとBで誘導されていることが明らかになった.今後,このタンパク質バンドのアミノ酸は配列を明らかにしていく必要がある.
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