研究概要 |
細胞分裂はサイクリン依存性キナーゼ(CDK)が活性化されることによって開始され,CDKはサイクリンDとCDK活性化キナーゼにより活性化される.さらに,CDK活性化キナーゼはサイクリンHによって活性化される.そこで,サツマイモよりCDK活性化キナーゼ,サイクリンH,サイクリンDおよびCDKのcDNAをクローニングし,遺伝子発現と塊根形成との関係を検討した.CDK活性化キナーゼ遺伝子の発現は,葉身,葉柄,ほふく茎,細根,塊根およびいも根のすべての器官で認められ,器官による発現レベルの差は小さかった.サイクリンH遺伝子の発現もすべての器官で認められ,器官による発現レベルの差も小さかった.サイクリンD遺伝子はすべての器官で発現されていたが,塊根での発現レベルが最も高かった.CDK遺伝子はすべての器官で同程度に発現されていた。また,CDK活性化キナーゼ,サイクリンH, CDKの各遺伝子の発現レベルは塊根形成過程の根において変化が認められなかったが,サイクリンD遺伝子の発現レベルは塊根が形成される過程で高まった.次に,CDK活性化キナーゼ,サイクリンH, CDKおよびサイクリンD遺伝子の発現制御について明らかにするため,遺伝子発現に及ぼすスクロースの影響について検討した.スクロースには遺伝子の発現レベルを変化させるシグナルとしての役割があり,塊根形成過程の根においてレベルが高まる.CDK活性化キナーゼ,サイクリンHおよびCDK遺伝子の発現に及ぼすスクロースの影響は小さかったが,サイクリンD遺伝子の発現はスクロースによって高まった.
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