昨年度に引き続き、イネの茎葉部(葉鞘および稈)における炭水化物転流の分子機構を解明するため、茎葉部の主要な蓄積炭水化物であるデンプンの分解過程に注目し、以下のような研究を行った。 1.イネ(品種:日本晴)の止葉下第1葉鞘のデンプン含量は、出穂前に上昇し、出穂後には低下するが、出穂後のデンプン含量の低下にともなって、デンプン分解系酵素(α-およびβ-アミラーゼ)の活性が上昇することがわかった。この活性の上昇に、複数存在するアミラーゼのアイソザイムのうちの、どれが関わっているのかを調べるため等電点電気泳動と活性染色による解析を行った。その結果、出穂前後でアイソザイムパターンに変化が見られたが、アイソザイムの詳細な同定には至らなかった。この原因として、酵素の抽出および濃縮方法の問題が疑われたので、現在さらに明瞭な分離・解析が可能な条件を検討している。 2.イネゲノムにおいて、α-アミラーゼは10個、β-アミラーゼは8個の遺伝子からなる遺伝子ファミリーを形成していることが明らかになった。そこで、これら遺伝子の発現レベルを定量的に解析するための遺伝子特異的PCRプライマーを作成し、リアルタイムPCR法による発現レベルの定量解析を行った。現在までにα-アミラーゼの10個の遺伝子のうち8個の解析を終えたが、それらの発現量に出穂前後で明確な差異は見いだせなかった。今後、α-アミラーゼの残りの2個およびβ-アミラーゼの各遺伝子について解析を進める予定である。
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