本研究では省エネ・低コスト貯蔵の手段としてエタノールパッドより発生するエタノール蒸気を用い、収穫後ブロッコリーの老化(黄化)抑制を行った。同処理のブロッコリー小花に対する緑色保持機構の解明のため、1.クロロフィル分解酵素活性に及ぼす影響、2.老化関連遺伝子の発現に及ぼす影響、3.食品学見地から組織内(小花)に蓄積するアセトアルデヒド含量を測定した。 その結果1.常温(20℃)貯蔵において無処理区は小花のクロロフィル含量が貯蔵2日から急激に減少し、5日で初期値の10%以下の値であるのに対し、エタノール蒸気処理区において、初期値の約70%保持された。クロロフィル分解に関係する酵素、クロロフィラーゼ、Mg-デキレターゼの活性はいずれも処理により抑制された。2.リアルタイムPCR法により、老化関連遺伝子、インベルターゼをコードするBo-INV2、システインプロテアーゼをコードする遺伝子、Bo-CP5、その他Bo-APX1、Bo-MT1の発現について調査し、いずれも処理により抑制されることをみいだした。3.アセトアルデヒド含量は、黄化に伴って初期値の約2.5倍に増加するが、処理したものでもその最大値は初期値の3.4倍以下の7.4μl/100gfw(15℃貯蔵、有孔ポリエチレン袋使用、エタノールパッド6g1個)であった。 以上より、ブロッコリーのエタノール蒸気処理による老化(黄化)抑制はクロロフィル分解関連酵素の活性が抑制されること、また老化関連遺伝子の発現が抑制されることなどの要因によることが示唆された。
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