研究概要 |
まず,フローサイトメトリーによる遺伝子解析を行った結果,DAPIおよびPI染色を用いたフローサイトメトリーから,各野生種の核DNA量に種間差異があることを明らかにするとともに,それぞれのDNA中の塩基構成比にも種間差異があり,その傾向は亜属の分類と類似していることを明らかにした.次に,シクラメンの生育サイクルを調査した結果,ほとんどの野生種で夏期に休眠が認められるものの,休眠を行わない常緑の野生種も存在することを明らかにするとともに,園芸品種と休眠を行う野生種の種間雑種では,休眠を行わない野生種との種間雑種より,夏期の休眠が強い傾向が認められることを明らかにした.続いて,シクラメン野生種の花色・花色素発現を調査した結果,有色花個体は,主に花弁表皮細胞の液胞に集積したアントシアニンによって花色発現しており,いずれの個体においても主要アントシアニンはマルビジングリコサイドであることを明らかにした.また,野生種を用いた種間交雑においては,園芸品種を種子親として野生種との交雑を行った場合,ほとんどの交雑組み合わせで花粉管が胚珠まで達するものの胚の発育不全により種子が得られないことから,胚珠培養を試みたところ,これまでに報告がない2交雑組み合わせを含む計5交雑組み合わせで雑種後代を得た.なお,野生種間の種間交雑においてもこれまでに報告のない交雑組み合わせで種間雑種を得た.さらに,予備的に野生種種子を一旦液体窒素に浸漬し,その後解凍して播種したところ,種子発芽能力は維持されていることを確認できたことから,冷凍処理による種子長期保存の可能性が示唆された.
|