研究概要 |
まず、DAPIおよびPI染色を用いたフローサイトメトリーにおいて、核DNA量とDNA中の塩基構成比(GおよびC:AおよびT)に種間差異があり、それらを利用した種間雑種検定が可能であることを明らかにした。しかしながら、いくつかの交雑組み合わせでは両親間の核DNA量とDNA中の塩基構成比に大きな差がなかったため、フローサイトメトリーのみでは雑種性の確認が難しかったことから、これらでは、DNAの特定領域の増幅、電気泳動による多型を利用した雑種検定が必要であると考えられ、特に父性または両性遺伝するマーカーの開発が有効であると考えられた。 次に、Cyclamen属野生種および園芸品種の種間雑種では、高温により休眠に導入されるが、その程度には個体差があり、また、すべて落葉したもの、葉数が著しく減少したものでも、15-20℃条件下に移動・維持することにより再び萌芽する個体が認められた。 また、野生種の花色素を調査したところ、有色花系の主要アントシアニンはいずれの種においてもマルビジン3.,5ジグルコシドであり、アントシアニンを含まない白色花系の野生種ではフラボノールのケンフェロールグリコシドが主要花色素となっていることが示唆された。 さらに、野生種と園芸品種との交雑を行い、胚救出時の培地成分、特に糖の影響を調査したところ、通常用いられるショ糖よりもマルトースを用いた場合に比較的多くの雑種が得られる傾向が認められた。なお、野生種および種間雑種の体細胞胚形成によるマイクロプロパゲーションは困難であったが、これは交雑親の遺伝的特性によるものであると考えられた。
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