研究概要 |
ミカン科ミカン亜科には世界および日本で最も生産量の多い果樹であるカンキツをはじめ産業上重要な植物が属するか,それらの成立については不明な点が多い。本研究では遺伝子の担体である染色体情報を解析することによって,この点について解明する。 19年度は,類縁関係,進化の解明に有効なリボゾームRNA遺伝子(rDNA)の染色体上での位置を蛍光in situhybridization(FISH)法によって明らかにすることにより,ミカン亜科植物の進化について検討を加えた。 FISHに用いるプローブは,ダイズにおける既知情報を利用して,カンキツ属(Citrus)のクレオパトラマンダリンのDNAからPCR法によって5SrDNAを増幅して用いた。 ミカン亜科植物7属9種の5SrDNAの染色体上での位置,数を検出したところ,原始的な特徴を備えるものはいずれも2か所の5SrDNA領域が検出できた。ミカン亜科植物の中では最も進化していると考えられる真正カンキツ類においては,5SrDNA領域の数に多様性が認められた。Clymeniaの1種,Fortunellaの3種およびCitrusの1種では5SrDNA領域は他種と同様の2か所であったが,Poncirusでは6か所認められた。このことは真正カンキツ類が各属に分化する過程で染色体の多様性が発生したことを示すものと考えられた。
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