クラブアップルの一品種の果実エキスから7種の化合物を単離構造決定し、これらの前駆脂肪細胞3T3-L1に対する脂肪蓄積抑制活性を検討して、この中ではエピカテキンとプロシアニジンB2とtrans-4-ヒドロキシ桂皮酸の3種が、脂肪蓄積抑制活性に寄与していることを明らかにした。また、これら3種の化合物を多く含む1品種を見出した。さらに、33品種のクラブアップル果実について、3種の化合物の果実中の含量の季節変化を定量した。その結果、ほとんどの化合物は未熟果実からも存在が確認され、それらの果実1個あたりの含量にも大きな季節変化は無かったが、8月から10月にかけてエピカテキンが減少しプロシアニジンB2が増加する傾向が見られた。この変化は、エピカテキンからプロシアニジンB2が作られるとされる生合成経路と符合するものであり、プロシアニジン類の生成時期についての新たな知見と考えている。 リンゴにおいて抗がん作用が認められているケルセチンに着目して、クラブアップルにおけるケルセチン合成に関連する酵素遺伝子の探索および構造解析を行った。既知の遺伝子情報を基に、PCR法によってクラブアップル品種'Indian Summer Crab'におけるケルセチン合成に関連する5つの酵素遺伝子の探索を行ったところ、4つの酵素遺伝子でPCR増幅産物を得ることが出来た。flavonoid 3'-hydroxylase(F3'H)遺伝子に関してさらに解析を進め、部分配列を決定することができ、塩基配列の違いから2種類の遺伝子を得ることが出来た。ブドウやペチュニアのF3'H遺伝子との相同性は73〜80%であり、F3'H遺伝子に特徴的なアミノ酸配列やHR2ドメインも保存されていた。今後は、この2種類のF3'H遺伝子の遺伝解析や供試品種以外のクラブアソプル品種におけるF3'H遺伝子の特性評価を進めていく。
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