本研究では、チューリップやバラ科核果類などの園芸植物を対象にジャスモン酸類(JAs)が糖性物質の溢泌誘導という他のホルモン類にはない特異的生理作用を有することを広く検証すること、さらにはJAsが成長・発達を制御する鍵として糖代謝を制御し、その代謝変化によって生理作用を発現することを明らかにすることを目的に研究を実施した。今年度の成果は、以下の通りである。 (1)バラ科核果類のスモモ、モモ、サクラなどを対象にした外生的投与実験により、JAsはエチレンと相互作用しつつガム物質形成を制御していることを示唆した。本成果をJournal of Fruit and Ornamental Plant Researchに発表した。 (2)チューリップ花茎を対象にJAsの外生的投与実験を行い、ガム物質形成がエチレンとの相互作用によって制御されているというこれまでの我々の結果を確認した。糖代謝に対する影響については、現在、分析実験を実施中である。また、花茎生長の植物ホルモン制御を明らかにする一環としてオーキシンの影響を調べた結果、オーキシンの花茎生長促進作用が球根の生育段階や保存期間の光条件によって影響されることを見出し、この成果を第27回国際園芸学会(韓国)でポスター発表した。現在、花茎生長制御機構について浸透調節並びに細胞壁物性の側面からの解析を実施している。 (3)チューリップの鱗茎にJAsを投与すると、鱗茎基部の根原基付近の組織でクロロフィル合成が誘導されるという生理作用を見出した。これまでにJAsはクロロフィル分解促進作用が知られているがクロロフィル合成促進作用は新奇なものであり、HPLCを用いてクロロフィルaおよびbを同定し、その成果をJ.Fruit and Ornamental Plant Researchに発表した。
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