研究課題
本研究では、園芸植物を対象に、ジャスモン酸類(JAs)の多糖類性ガム物質の溢泌という特異的生理作用の解明を目指し、研究を実施した。今年度の成果は、以下の通りである。(1)チューリップ茎葉では、JAsがガム形成に主導的役割を果たし、エチレンと相互作用しつつ機能することを示唆してきた。チューリップ(アペルドーン品種)球根のJAsに対する感受性について検討し、JAs誘導のガム形成が、球根の発達段階と密接に関係すること、また、光の有無はガム形成能にさほど影響しないことを示した。また、チューリップの様々な品種においてガム形成のエチレン感受性を検討したところ、感受性が品種によって異なっていた。これらの結果に文献調査を交え、総説として Floriculture and Ornamental Biotechnologyに発表した。(2)スモモ果実を対象に、障害誘導ガム形成に際してのエチレンおよびJAsの動態を機器分析により検討した。エチレン生成が障害で一過的に増えることを示し、ガム形成におけるエチレンの関与を示唆した。他方、JAsに関しては、重水素標識した内部標準物質とGC-MSを用いて定量実験を遂行中である。これについては、次年度も実験を継続する。(3)チューリップ同様、花卉園芸上重要な球根作物であるムスカリ(Muscari armeniacum)を対象に、ガム形成に重要な植物ホルモンを明らかにする目的で投与実験を行い、ムスカリではエチレンとJAsが共同してガム形成を制御することを示唆した。ガム物質の化学組成に関する実験から、チューリップとはガム物質の組成が異なることを見出した。この成果は、4月にオランダで予定される国際シンポジウムで発表予定である。(4)チューリップ花茎の伸長成長制御機構を、オーキシンに対する反応性の側面から解析し、球根の成熟段階がその後の花茎のオーキシン反応性に関わることを見出し、その結果をFloriculture and Ornamental Biotechnologyに発表した。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Floriculture and Ornamental Biotechnology 1
ページ: 30-40
ページ: 142-146