研究概要 |
ウリ類急性萎凋症(黒点根腐病またはホモプシス根腐病)発病抑止土壌の探索と病害発生状況を把握するために,メロン急性萎凋症の発生が激しい圃場と少ない圃場を千葉県銚子市近郊の温室メロン生産地域から探索し,土壌を採取した。これらの土壌からDNAを抽出し,黒点根腐病菌またはホモプシス根腐病菌に特異的なPCRプライマーを用いて,当該病源菌の有無を調査したところ,供試土壌の多くには黒点根腐病菌が多数存在することが明らかになった。そこで,黒点根腐病菌の菌量と病害発生の関係を明らかにするために,本菌に特異的なreal-time PCR用プライマーの構築を試みている。 一方,メロン黒点根腐病菌は土壌中の子のう胞子が第一次伝染源と考えられている。そこで,本菌の子のう胞子発芽促進要因を土着の微生物相の面から検討した。非滅菌または滅菌した畑土壌懸濁液を添加した培土に子のう胞子を接種後,メロンを栽培し,その根系における胞子発芽を計数したところ,非滅菌土の胞子発芽率が有意に高く,胞子発芽に対する土壌微生物の関与が示唆された。そこで,畑土壌から任意に21菌株の細菌を分離し,それらを単独接種した滅菌培土でメロンを栽培後,根系における胞子発芽率を調査したところ,菌株gn8またはgp22wの接種によって胞子発芽率が有意に増加した。また,これら2細菌の培養ろ液を添加した培土でも胞子発芽率の向上が認められ,これらの土壌細菌が産生する物質によってメロン黒点根腐病菌の子のう胞子発芽が誘導されていることが示唆された。なお,16S rDNA塩基配列から菌株gn8およびgp22wは,それぞれshinorhizobium sp.とMicrobacterium sp.と推定された。現在,黒点根腐病の発病程度とこれらの子のう胞子発芽促進細菌群(ギルド)の関係を調査している。
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