研究概要 |
1.GFP標識ウイルスの構築と全身移行 GFP標識ウイルスはウイルスの移行、増殖を可視的に解析する強力な武器である。RNA2外被タンパク質リードスルー領域にGFPを挿入し、RNA1との共接種接種により、効率よくGFPが発現するウイルスの構築を行った。このGFP標識ウイルスを用いて、全身感染宿主B.maritima M8におけるウイルスの移行様式、組織内分布を観察した。その結果、接種葉の葉柄、茎および主根では,維管束組織の一部にGFPが観察され、非維管束組織には観察されなかった。しかし、細根では維管束細胞と皮層細胞に蛍光が観察された。それに対して、全身感染葉の葉脈、葉柄では表皮細胞に強い蛍光シグナルがみられたが、維管束組織ではまれに蛍光が観察されるのみで、その頻度は非常に低かった。以上の結果は、葉脈、葉柄ではウイルスは皮層細胞から維管束組織への侵入が困難であること、また逆に維管束組織から非維管束組織への脱出も困難であることを示唆している。 2.BNYVVのp31遺伝子の役割 BNYVV RNA4にはp31のORFが存在する。このp31に人為的変異を導入し、RNA3と比較しながら解析を行った。その結果、野生型p31をもつウイルスは、変異型p31をもつウイルスと比べて、100倍以上の伝搬効率を示した。一方、RNA3のコードするP25はテンサイのそう根症状の発現に必須であり、Beta属植物に強い病原性を示すことが知られているが、さらにp31の存在により病徴が強化されることが判明した。またp31はN.benthamianaにおける強いモザイク症状の発現に関与していた。GFP発現植物を用いて、p25とp31のRNAサイレンシング抑制効果を調べた結果、どちらの遣伝子も局所的サイレンシングを抑制できなかった。しかし、GFPサイレンシング植物にウイルスを接種したところ、p31は根特異的にトランスジーンのサイレンシング抑制に貢献していることが明らかとなった。
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