平成18年度は、本研究の目的である疫病菌の基準核型決定に関わる研究として菌株の倍数性と染色休構成についての実験を行い、下記の結果を得た。 1.フローサイトメトリー(FCM)による核DNA含量測定法の確立と倍数性解析 菌糸体からの単離核と遊走子を用いるFCMの方法を確立した。得られた単一菌株の測定ヒストグラムはシャープなG_1期核の主ピークを示し、迅速で正確な相対的核DNA含量の測定が可能となった。日本産13菌株とオランダ産6菌株について相対的DNA含量を測定したところ、それぞれ過半数の菌株が2倍体と推定され、残りは3倍体と異数体(2倍体と3倍体の中間のDNA含量を示した)であった。それらの結果と遊走子形成能力を勘案し、核型解析の基準として使用する2倍体と3倍体の菌株を各1株選択した。 2.核DNA絶対量の測定 シロイヌナズナ(推定ゲノムサイズ250Mb)を内部標準にしてFCM測定を行い、2倍体及び3倍体基準菌株の遊走子DNA含量(ミトコンドリアDNAを含む)と菌糸体核DNA含量を推定した。その結果、基準菌株のゲノムサイズ推定値として約240Mbという値を得た。なお、遊走子中のミトコンドリアDNA量は80Mb以上と推定され、遊走子を試料に用いる場合にはmtDNAの寄与を十分考慮することが必要であることがわかった。 3.シングルコピー遺伝子を用いたFISH解析 PCRでクローニングしたシングルコピー遺伝子NiaAとPiexolをプローブとし、FCMにより2倍体及び3倍体と推定した基準菌株の間期核に対するFISH解析を行った。2倍体菌株では2個、3倍体菌株では3個のシグナルが検出され、FCMで推定した倍数性が実証された。また、rDNAでも同様の結果が得られた。 4.染色体観察 発芽管破裂法で作製した基準菌株の染色体標本を観察し、染色体数について2倍体菌株では10本、3倍体菌株では15〜20本という値を得た。また、DAPI-Actinomycin D二重染色で染色体バンドを検出した。
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