研究概要 |
平成19年度に得た結果は下記の通りである。 1.フローサイトメトリー(FCM)による日本産及び外国産菌株の倍数性解析 菌糸核を用いるFCMによって日本産株(北海道産16株、長崎産9株)と外国産株(メキシコ産10株、アメリカ産2株)のDNA含量を測定し、倍数性を推定した。日本産株は、2倍体と3倍体がそれぞれ14株と9株、2倍体と3倍体のヘテロカリオンが2株見つかった。一方、外国産株は2倍体が大半(アメリカ産1株、メキシコ産8株)で、残りはヘテロカリオン(アメリカ、メキシコ各1株)と半数体(メキシコ1株)であった。倍数性と交配型の関係については、日本産の3倍体株はすべてA1で、2倍体株は日本産、外国産ともA1とA2が混在していた。日米欧では4倍体株が高頻度で存在するとの過去の報告に対し、今回の調査では全く4倍体は検出できなかったことから、過去10数年間に菌集団が遷移したことが明らかとなった。また、今回見つかった半数体は、疫病菌を含めて卵菌類で初めての半数体の例であり、卵菌類の遺伝学における重要な発見である。 2.核型解析手法の確立 体細胞分裂中期染色体標本作製法を確立するために、笑気ガス高圧処理装置を設計・作製し、ガスの圧力や処理時間と中期染色体出現頻度との関係を調べた。笑気ガス処理は動植物では良い結果が得られているが、疫病菌では効果が認められなかった。また、倍数性を蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)で調べるためのプローブとして新たに3種類のシングルコピー遺伝子(M90,PiSP3,PiPLD1)をクローニングし、複数の異なる検出系を用いて間期核に対するFISHを行った。これらのプローブは昨年度使用したNiaAやPiexo1と比べてバックグランドが多かったが、シグナルを確認することができたので、今後のマルチカラーFISHを用いた倍数性解析に有用である。
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