研究概要 |
植物ウイルス感染拡大の分子機構を明らかにすることは,植物ウイルス病防除戦略の確立に重要である.これまでに,カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の多機能性封入体蛋白質(Tav)がCaMVの感染拡大に重要な役割を果たすことを明らかにした.本研究では,1)感染拡大機能に必要なTavの機能ドメインおよび細胞内局在性を明らかにすること,および2)Tav変異体の弱毒性の抑圧変異体宿主を単離し,感染拡大抑制機能に関わる宿主遺伝子を同定することを目的とする.それぞれに関する平成18年度の成果・進捗状況は以下の通り. 1)感染拡大機能に重要なドメインおよび他のいくつかのドメインを欠失させたTav変異体についてGFPとの融合蛋白質の発現系を構築し,アラビドプシスを形質転換した.現在,T2個体群を解析中である. 2)エチルメタンスルホン酸によって突然変異を誘発したアラビドプシス(Col)のM2集団を用い,全身感染能が著しく低下したTav欠失変異ウイルスの接種による第一次スクリーニングを開始した.組織化学的検討からこの変異ウイルスは,野生型宿主においても低率ながら茎生葉に移行するが,上位ロゼット葉への移行はほとんど認められなかった.そこで,ウイルスの弱毒性を抑圧する変異の指標として,上位ロゼット葉におけるウイルスの蓄積をティッシュプリンティング法によって検討し,これまでに約2000個体のM2集団から46の上位ロゼット葉に感染が広がった個体を選抜し,それらのうち,稔性のあったものから自殖種子を得た.今後,組織化学的検出法を用いた第二次スクリーニングの後,変異遺伝子をマッピングする予定である.
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