本研究課題は、チェリモヤやその近縁種であるアテモヤの訪花昆虫相を複数の地域・期間ごとに解明するとともに、それら訪花者がその地域・期間の果実食性昆虫群集とどのような関係にあるのかを解明しようとするものである。とくに、チェリモヤやアテモヤの果実を利用する昆虫の群集と、バナナや柑橘などそれ以外の果物を利用する昆虫の群集に違いがあるのか、あればいずれが訪花者群集に近いのかを知ろうとしている。本年は、アテモヤの訪花者群集を三重県御浜町および沖縄県石垣市の試験研究施設あるいは農家において複数回採集するとともに、それぞれの調査場所・時期にアテモヤまたはチェリモヤ、パイナップル、バナナ、オレンジの果実をトラップとして設置した。それぞれで得られた昆虫を群集と見なして現在解析中である。 本年は3年計画の初年度であり、まだ十分ではないが、概略以下のようなデータが得られている。まず、御浜町では本年の訪花者群集は貧弱であったが、過去のデータとも照らし合わせるとハネカクシ科の2種の昆虫が主たる訪花者である。一般的な訪花者と考えられているケシキスイ類はここではほとんど見られない。一方果物トラップを見るとチェリモヤの果実にはハネカクシ類が極めて多く、これ以外にケシキスイ類も少数いた。いっぽう、バナナやオレンジの果実からはハネカクシはほとんどとれず、主にケシキスイ類が得られた。果実でエタハネカクシと訪花していたハネカクシは必ずしも同種ではないが、少なくとも一部は重複しており、3つの果物を訪れる昆虫群集の中ではチェリモヤのものが訪花者と最も近いと言えそうである。石垣においては訪花者のほとんどはケシキスイ類で、ハネカクシは見られなかった。果実で得られた虫もケシキスイ類が中心であるが、果実問の違いを解析するに足るデータは得られておらず、今後さらにサンプルを積み増すことが必要である。
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