本研究課題は、アテモヤなどの果樹の訪花昆虫相を複数の地域で解明し、それらがその地域の果実食性昆虫群集とどのような関係にあるのかを調べようとする。とくに、アテモヤなどの果実を利用する昆虫の群集と、それ以外の果物を利用する昆虫の群集に違いがあるのか、あればいずれが訪花者群集に近いのかを課題としている。本年はこれまでに引き続き、アテモヤの訪花者群集を三重県御浜町および沖縄県石垣市の試験研究施設あるいは農家において複数回採集するとともに、それぞれの調査場所・時期にアテモヤまたはチェリモヤ、パイナップル、バナナ、柑橘の果実をトラップとして設置した。御浜町ではおもにハネカクシ類が、また石垣島ではおもにクリイロデオキスイ、カタベニデオキスイ、モンチビヒラタケシキスイが花から多く採取された。果実からもよく似た昆虫群が採取されたが、訪花者は少なくとも柑橘に集まる群集よりはアテモヤの果実の群集に近かった。御浜町ではさらにバナナやパイナップルと比べてアテモヤの果実の群集の方が訪花者に似ている傾向があったが、石垣島ではそうとは言い切れなかった。この地域による違いは、おもに御浜町の花で得られたハネカクシ類は、アテモヤ等以外からはほとんど採取されなかった事による。 サブテーマとして、主たる訪花甲虫たるクリイロデオキスイが果実に産卵する際にその大きさを査定して産卵数を変化させている事も明らかにした。これは、実験材料として本種を飼育するときに必要なデータである。
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