研究概要 |
ミカンハダニによるカンキツ生体防御物質打破機構について、カンキツを利用できないクワオオハダニをモニターとして、カンキツ利用を妨げる成分の部分精製を試みた。その結果、微極性画分(15%エーテル/ヘキサン画分)にクワオオハダニ特異的な致死活性が検出された。この画分をさらに分画すると活性が顕著でなくなることから、微極性の複数成分が致死活性に介在すると推測された。また、カンキツを摂食しているミカンハダニで特異的に発現している標的遺伝子について、cDNAを解析し、全予測長約15,000bpの内、3'末端(ポリAテイル)から約5,000bpについて塩基配列を決定した。アミノ酸配列解析からポリプロテインと考えられたが、相同性が最も高いものでも25%以下であり、新規遺伝子の可能性が示唆された。 イネ科植物の持つベンゾキサジノイド類と呼ばれる防御物質一種DIMBOAは、数種の昆虫に対して、毒性を示す。これに対して、イネ科植物を食害する鱗翅目ヤガ科アワヨトウはDIMBOAの毒性を回避できる。そこで、DIMBOA添加飼料で飼育したアワヨトウ糞のメタノール抽出物から、methoxy glucoside carbamate、DIMBOA-2-O-Glc、そしてHMBOA-2-O-GlcのDIMBOAグルコース配糖体3種を同定した。さらに、アワヨトウを解剖して腸管を取り出し、UDP-glucoseおよびDIMBOAとインキュベートすると、DIMBOA-2-O-Glcが検出された。以上の結果、アワヨトウはイネ科植物の防御物質DIMBOAをUDP-glucosyltransferasesにより、グルコシル化して代謝することが示唆された。
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