(1)昆虫は、光や温度が変化する季節の移り変わりと共に、卵から幼虫、サナギ、成虫へとダイナミックにその形態を変化させる(変態)。また、冬になり気温が低下し、日照時間が短くなると、昆虫は、呼吸回数を減らし、変態を起こさずに越冬する(休眠)。これらの休眠や変態は、脳の中に存在する様々な神経ペプチドが光や温度の刺激を受けて、分泌されることにより引き起こされる。本研究では、変態と休眠という現象に関わる昆虫の脳内に存在する低分子量GTP結合蛋白質に焦点を合わせて研究を行った。 (2)まず、蛋白質や神経ペプチドの分泌に関与する低分子量GTP結合蛋白質であるrab蛋白質の一つであるrab8蛋白質のcDNA(カイコ脳由来)を用いて、蛋白質を大腸菌で発現させた後、各種クロマトグラフイーにより精製した。この蛋白質を抗原として、マウスを用いて、rab8に対するモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を作成した。 (3)次に、これらの抗体を用いたイムノブロッテイングにより、カイコの脳にrab8蛋白質が存在することがわかった。また、pro-Q diamond試薬を用いてカイコ脳内のリン酸化蛋白質の解析を行ったところ、rab8蛋白質はリン酸化されていることを明らかにした。また、カイコ脳抽出物を用いたwest-western分析により、カイコの脳内にrab8と相互作用する蛋白質を複数種明らかにした。 (4)またrab8のdeletion変異体、点変異体を数種類作成し、大腸菌で発現させた後、精製した。これらの発現蛋白質をin vitroでプロテインキナーゼによりリン酸化した。その結果、rab8中のリン酸化されるアミノ酸残基を明らかにした。
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