アトボシキタドロバチとヤドリコナダニを飼育した結果、ヤドリコナダニはドロバチの幼虫を殺さないものの体液を吸う寄生者であることがわかった。一方で、ドロバチ幼虫の天敵である寄生蜂Melittobia acastaに対して攻撃し、どちらかが全滅するまで戦った。ダニが寄生バチに勝つ(殺す)確率はダニの個体数と共に上昇し、10頭のダニはほぼ100%の確率で1頭の寄生蜂を殺すことがわかった。従ってダニは寄生蜂がいないときは自身がドロバチの寄生者であるが、寄生蜂が出現するとダニとドロバチの関係は相利共生へと変化することが明らかとなった。すなわちアカリナリウムは共生ダニを巣に運ぶために発達したと結論した。ハチのアカリナリウムには270頭程度のダニが便乗することが可能で、ハチの最大産卵数は26であることから、10頭程度のダニを万遍なく仔の育房に入れるために徐々にアカリナリウムの形態が進化したと推測した。これらのことから森林生息性昆虫を天敵として利用する際、害虫との相互関係のみならず、天敵の共生者や捕食者なども含めた相互解明が重要であることを明らかにした。
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