研究概要 |
5つの研究課題について、以下のような結果が得られた。 1.イネ科植物における金属元素の過剰症とムギネ酸分泌の関係 1,10,100μM Niで栽培した鉄欠乏オオムギのNi過剰症においてNiの濃度上昇に従ってムギネ酸合成と分泌が抑制された。 2.イネ科植物における有害元素とムギネ酸分泌との関係 水耕オオムギにおいて、ヒ素濃度を0,0.67,6.7,67μMに変化させてヒ素過剰症を誘導したところ、ヒ素誘導鉄クロロシスと思われる症状が現れた。また、鉄欠乏植物に同様にヒ素過剰処理をしたところ、67μMにおいてムギネ酸の合成分泌が90%程度に減少した。しかし、葉緑素含量は0,0.67,6.7μMにおいてほぼ0であったにも関わらず、67μMにおいて葉が緑化した。 3.導管中の微量元素の移行量と添加ムギネ酸の効果 水耕オオムギに、ムギネ酸分泌の起こらない午後の時間に、過剰濃度(正常培地の100倍濃度)Cu, Zn, Mnを3時間、ムギネ酸の添加又は無添加条件下で吸収させ、その後2時間の導管液を採取し、導管液中の金属含量を測定した。その結果、ムギネ酸添加により、導管液のMn濃度は変化しなかったが、CuとZnの濃度は増加した。このことは、経根吸収されたムギネ酸が根内において導管への2つの金のloadinを促進することを示唆した。 4.ムギネ酸金属錯体の形態の解析 Fe^<3+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>,Mn^<2+>,Ni^<2+>とムギネ酸の錯体形成時のモル比をNMRにより検討した結果、いずれも1:1であると結論された。しかし、Ni^<2+>はそれ以外のモル比でも錯体形成しうることが示唆された。 5.単離細胞膜による微量元素の吸収の解析 鉄欠オオムギ根より単離した細胞膜小胞によるCdの吸収実験において、Cd投与時にCuやFeが共存すると膜状で競合し吸収抑制が起こることが示された。
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