異なる品種のダイズの土壌窒素に対する応答能の違いを調べるため、西日本で栽培されている品種を中心に72品種のダイズを窒素条件の異なる土壌(20g/m^2/月の無機窒素が放出される土壌と出ない土壌の2種類)で生育(3個体/処理区)させた。その成長(茎長、完熟期)と種子収量、成分含有率の変動を比較することにより、土壌窒素条件への際立った違いを持つ数品種の選抜を試みた。ダイズ品種は、収穫時期(10月上旬一11月下旬)および種子タンパク質含有率(38〜48%)の異なるものを選んだ。夏ダイズは、夏の乾燥害により収量は低下したが、それ以降のものは正常であった。窒素条件の茎長や種子収量への影響は、品種で異なった。土壌窒素濃度の高い条件で生育の良いものが多かったが、逆の場合もあった。夏ダイズを除く48品種の中で、高窒素土壌で収量が増加したもの33品種、低下したもの12品種、茎長が長かったもの30品種、短かったもの11品種であった。高濃度の土壌窒素は根粒の着生と窒素固定活性を抑制するが、それらの違いが生育や収量に反映する。品種間で異なる結果になったことは、それらの植物の生育への影響程度が異なることを示唆する。種子成分含有率は現在調査中であり、不明であるが、今までの結果からは低タンパク品種で増加程度が激しいと予測される。これらの特性の品種間差を比較し、来年度の生理生化学的な研究に用いる品種を絞り込む計画である。ダイズは窒素肥料が不要であると言われる一方で、地域によれば窒素施肥を奨励している所もある。これらの矛盾は、異なる品種のダイズを同質のものとして考えていることで起きている可能性が高く、次年度の研究で、ダイズ品種間での窒素応答能の違いを明らかに出来れば、ダイズ栽培における窒素施与技術が向上することが期待される。
|