研究概要 |
シダ植物のヘビノネゴザ(Athyrium yokoscense)とアブラナ科のスズシロソウ(Arabis flagellosa)は鉱山地域で群落を形成して生育することが知られている.また,ヘビノネゴザはCd, Pb, Asに対して,スズシロソウはCd, Pb, Znに対して超集積性を持つことが報告されている.しかし,両植物の金属集積メカニズムについては不明な点が多く残されている.そこで,本研究ではヘビノネゴザ・スズシロソウ群落における金属元素の動態を検討することにより,ヘビノネゴザ・スズシロソウ群落の根圏での重金属・ヒ素の可溶化と重金属・ヒ素集積メカニズムの解明を試みた. (1)6月,8月および10月に採取した植物の重金属・ヒ素含有率に有意な差は認められなかった.6月に比べ8月,10月のほうが植物バイオマスが大きく,ヘビノネゴザとスズシロソウのいずれも生育期間を通して重金属・ヒ素を吸収し,バイオマスの増大とともに集積量が増加した.しかし,ヘビノネゴザの菌根感染率との関係は明赤ではなかった。(2)生育期間の土壌溶液のCd, Pb, Zn濃度はそれぞれ0.1-4.8,0.2-2.4,4.3-313.5mgL^<-1>の間で変動し,その推移は同様の傾向を示した.すなわち,Cd, Pb, Zn濃度はSS区では上部,下部ともC区と差がなく,8週目まで上昇した後ほぼ一定となったが,HNとHN+SS区では上部,下部とも8週目以降も上昇しつづけた.このように,スズシロソウのみのSS区と比べ,ヘビノネゴザを含むHN区とHN+SS区の生育期間後半で土壌溶液のCd, Pb, Zn濃度が高く推移した.これらのことから,ヘビノネゴザの根圏において何らかの分泌物が放出され,固相のCd, Pb, Znが溶解したと推察される.一方,As濃度はいずれの処理区,採取時期,採取位置においても27μgL^<-1>以下と極めて低く,また生育期間が長くなるにつれて低下する傾向を示した.アニオンであるAsは低pHで土壌に強く吸着されるためと考えられる.植物の重金属・ヒ素含有率に処理区間で有意差は認められなかったが,両植物ともHN+SS区の方でCdとZn含有率が高くなる傾向を示した.
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