研究概要 |
重金属汚染土壌の浄化に用いる植物は、重金属耐性で高集積能が不可欠であり、その分子育種や利用技術開発には、生態学的特性や耐性機構の生理学的解析など基礎的な研究が重要である。本研究では、-SH基を含有する各種重金属リガンドの植物体内における機能と役割を総合的に解析するため、-SH基合成の基点となる硫黄代謝系および重金属リガンドの生合成系と重金属の無害化機能の関係について、生理学的および分子生物学的な手法で解析した。 本年度は、シロイヌナズナを用い、Cd,Ni,Zn処理に伴うフィトケラチン(PCs)の生成量とその種類の差異について検討した。その結果、Cd処理によって約14KDaのペプチドが生成し、これがPCsと思われた。このPCsは、Cdの処理濃度を高めても生成量は増加しなかった。また、NiおよびZnを処理した場合でも、ほぼ同じ約14KDaのペプチドが生成した。しかし、ペプチドの生成量はNiやZn50μM処理の場合の方が多かった。このことから、シロイヌナズナの場合、Cd,Ni,Znの過剰処理に対する応答は同じであることが示唆された。 一方、同じアブラナ科植物(Brassicaceae)にCdを処理した場合のPCsの生成量を比較検討した。供試植物は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の他、タカネグンバイ(Thlaspi japonica v. glauca)、ミヤマハタザオ(Arabis lyrata ssp. Kamtschatica)、アリッサム・モンタナ(Alyssum Montana)、ハクホウナズナ(Draba kitadakensis)を用いた。その結果、Cdを処理した場合、Arabidopsis属の場合はA. thaliana、A. lyrataとも6500DaのPCsが生成したが、Thlaspi属、Alyssum属、Brabarea属、Draba属植物では、1649DaのPCsが生成した。このことから、同じアブラナ科植物(Brassicaceae)でも応答が異なることが示され、重金属に対する応答システムが異なることが明らかとなった。
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