研究概要 |
sPLA_2、LPC、SPCとNGFとの間でMAPKリン酸化に関して協調作用が見られるかどうかを、suboptimalな濃度のNGF(0.2,1,50ng/ml)を用いて検討した。その結果、30分処理、3時間処理を行った細胞共に、LPCあるいはSPCとNGFとが共存することにより、MAPKリン酸化が各々の単独処理に比べて亢進すること、即ち協調作用が見られた。これが加算的な効果か相乗的な効果かを確かめるため、NGFとLPC・SPCの濃度を変化させ、協調作用の有無を調べた。その結果、LPC、SPCともに、NGF・LPC・SPC単独刺激だけでは見られないような顕著なリン酸化が見られ、それが相乗的な効果であることが分かった。この現象は、1μMという低濃度のリゾリン脂質でも顕著に認められた。 これまでの研究で、sPLA_2およびLPCによるPC12細胞の突起伸長誘導には細胞外Ca^<2+>の存在、およびL型Ca^<2+>チャネルの活性化が必要であることが分かっている。また、SPCによる突起伸長も細胞外Ca^<2+>とL型Ca^<2+>チャネルへの依存性を示すことが明らかとなっている。そこで、NGFとLPC・SPCの協調作用が細胞外Ca^<2+>の有無に影響されるかどうかをキレート剤(EGTA)の添加、またはCa^<2+>-free培地を用いた実験を行い検討した。その結果、Ca^<2+>の有無に関わらず、LPC・SPCとNGFによる協調的なMAPKのリン酸化が認められた。従って、LPC、SPCとNGFとの協調的作用には細胞外Ca^<2+>は不要であると考えられる。 LPCおよびSPCにNGFとの協調作用が確認できたことから、これらの条件で実際にPC12細胞の分化誘導および突起伸長が誘導されているのかを検討するために、LPCおよびSPCとNGFで24時間刺激したPC12細胞を顕微鏡で観察し、突起伸長を定量した。その結果、NGF単独の場合に比べ、LPC・SPCが共存すると突起伸長が亢進することが分かった。この作用はSPCに比べLPCの方がより顕著に認められ、通常のNGF処理において用いられる100ng/mlの場合よりもはるかに高い割合の細胞で突起伸長が認められた。
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