1. Corynebacterium glutamicumの野生株から変異誘導した高濃度酸素要求株を受容菌として、本菌のゲノムライブラリから同形質を回復させるDNA断片を多数取得した。これらの塩基配列をデータベース解析し、DNA領域として6種を同定、次いでサブクローニングにより目的とする遺伝子を特定した。野生株における各遺伝子の増幅効果を、最少培地を用いて撹拌培養と静置培養の2条件にて評価した。通常の撹拌培養では、いずれの遺伝子の増幅株もベクターのみの増幅株(対照株)に比べて生育速度が悪化する傾向を示したが、静置培養では対照株と同等か、むしろそれ以上の生育速度を示した。 2. C.lutamicumは、グルコース代謝に関わるNAD型GapAと糖新生に関わるNADP型GapBを持つ。これまでの検討からNADP型GapBをグルコース代謝に利用することは困難と判断された。一方、嫌気性菌にはNADP型でかつグルコース代謝に働くGapNの存在が知られる。そこで、自前のgapAB遺伝子に代えて、嫌気性菌のNADP型gapNのみを発現するC. glutamicumの育種を試みた。GapNを持つことが報告されているStreptococcus mutansから同遺伝子をクローン化した。ついで、C. glutamicumΔgapB株ベースに、そのgapAをgapNでORF置換し、ゲノム上でのgapN発現株を造成した。本株はグルコースで生育できるが、生育速度は野生株の2割程度であった。しかし、長時間の培養で種々のタイプのサプレッサー株が出現することを見出した。これらのサプレッサー株はグルコースでの生育速度が野生株の5〜8割程度まで改善されていた。
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