研究概要 |
これまでに炭酸固定機能が評価されていなかった2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素をとりあげ、Penicillium属カビから酵素を単一に精製した。当初、活性は不安定であったが、安定化条件を検討し、精製標品を得た。炭酸水素カリウムを二酸化炭素源とした反応系において、カテコールへの炭酸固定反応を触媒することを明らかにした。この反応では、オルト位へのカルボキシル基導入のみが確認された。アミノ末端アミノ酸配列情報を利用し、酵素遺伝子をクローニングし、酵素一次構造を明らかにした。2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素と40%程度の相同性を示し、オルト位への炭酸固定反応を触媒するグループに分類できることを示した。3,4-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素ではカテコールへの炭酸固定反応では生成物が異なるのは、水酸基の位置を厳密に認識して反応を触媒していることに基づくと考えられる。 炭酸固定反応の反応場として超臨界二酸化炭素に注目した。反応にはモデル酵素として安定性の高い2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を用いた。超臨界二酸化炭素下で炭酸固定反応を行わせると、反応1時間までは常圧下での反応に比べて変換率に差異は認められなかったが、24時間の比較では変換率が低い値となった。これは、超臨界流体が酵素分子に影響を与えたためと考えた。そこで、休止菌体を超臨界二酸化炭素に晒した後、脱炭酸酵素活性の残存率を測定した。酵素活性は1時間の処理によっても顕著に低下することが判明し、酸性へのpHシフトによって酵素活性の消失を招いたものと推定した。次年度にはpH緩衝能を配慮した反応系の構築を検討する。
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