研究概要 |
すべての生物を通して初めてγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)の結晶構造解析に成功した。また、γ-グルタミル酵素中間体の構造も明らかになり、基質認識に関わるアミノ酸残基を特定した。この結果に基づいて部位特異的変異を加え、GGT変異酵素のグルタリル-7-アミノセファロスポラン酸アシラーゼ活性を50倍に増強することに成功した。GGTの古典的な阻害剤であるアザセリンやアシビシンとの共結晶の3次元構造を決定した結果、これまで提唱されていた阻害メカニズムでは説明できないことが明らかとなり、新しい阻害メカニズムを提唱した。一方、自己触媒的プロセシング前の前駆体型GGTの結晶構造解析を行い、プロセシング反応の求核残基もThr391の側鎖のO原子であることを示した。プロセシングによって活性中心の付近の構造変化により活性中心が形成されることが明らかとなった。 以前から得られていたγ-グルタミルシステイン合成酵素(GshA)の脱感作変異株は3カ所に変異(W100L,A494G,S495F)があったが、そのうちS495Fが脱感作に寄与していることを明らかにし、40mMグルタチオン共存下においてもほとんど活性に影響を受けないことを示した。また、gshA履遺伝子のイニシエーションコドンをTTGからATGに変え、翻訳が起こりやすくした。さらに、GshAの表面に局在しタンパク質を不安定化させる4つのCys残基をSerに置き換え、酵素の安定化を図った。さらに、セリンアセチルトランスフェラーゼにM256I変異を導入してCysに対して脱感作した。培養条件、特にC源S源について検討を加えた。以上の改良点を総合することにより、大腸菌の培養液上澄中に約1mMのグルタチオンを蓄積させることに成功した。
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